様々な酒米を楽しむ会

先日、「様々な酒米を楽しむ会」を開催致しました。

ご参加頂きましたお客様、誠にありがとうございました。

日本酒の原料はと言えば、「米」「水」「米麹」の3つが挙げられます。

3つのみですから、それぞれが日本酒の味わいに大きく影響を与えると考えられます。

そのうちの一つである「米」は食用米も一部使用されていますが、日本酒を造るためにつくられる「酒造好適米」が主として使用されています。

現在、「酒造好適米」と呼ばれているものは100種類以上あると言われています。

今回はその中で、主要なものを中心にご紹介させて頂きました。

それでは今回の出品酒ですが、乾杯酒を含めまして、合計14銘柄です。

この中で乾杯酒とさせて頂いたのは…

一番右端にあります「渡舟 純米大吟醸 斗瓶取り 原酒」です。

茨城県産の「短稈渡船」(山田錦の父)を使用しています。

現在の社長である山内孝明さんが蔵に戻った1989年の頃は、茨城県で栽培されている酒米は少なかったそうです。

山内さんは茨城県産の酒米で美味しいお酒を造りたいと思い、調べていくうちに「短稈渡船」という酒米がかつて栽培されていたこと知ります。

そして、つくば市の研究機関に保管されていた種籾を、僅か14グラムながら入手し、少しずつ作付面積を広げることで、ようやく「短稈渡船」で醸した酒を造ることに成功しました。

そして出来上がったお酒がこの「渡舟」という銘柄です。

今回は「渡舟」の最高峰となる斗瓶取りをご堪能頂きました。

 

その他、右から順番に…

①くどき上手 純米大吟醸 伊勢錦

②鶴齢 特別純米 雄町 生原酒

③宮泉 純米吟醸 山田穂

④而今 大吟醸

⑤秀鳳 純米大吟醸 愛山 生原酒

⑥義侠 純米 五百万石 生原酒 滓がらみ

⑦信州亀齢 純米大吟醸 美山錦

⑧加茂錦 荷札酒 純米大吟醸 八反錦50 無濾過生原酒

⑨播州一献 純米吟醸 無濾過原酒 ひやおろし

⑩田酒 純米吟醸 秋田酒こまち

⑪栄光冨士 純米大吟醸 闇鳴秋水 無濾過生

⑫雨後の月 純米大吟醸 白鶴錦

⑬山形正宗 純米大吟醸 雪めがみ

 

①から酒米の育成年の古い順に並べてあります。

まず①ですが、兵庫県産の「伊勢錦」を使用しています。

1849年に在来品種である「大和」から選抜された品種です。

長稈で倒伏しやすかったことから栽培されなくなっていたものを、元坂酒造さんが復活させました。

現在、三重県と兵庫県で栽培されているようです。

 

②は前回の日本酒会のテーマでもある「雄町」で醸したものです。

兵庫県瀬戸産の雄町を使用しています。

 

③は山田錦の母である「山田穂」を使用しています。

「山田錦」とともに兵庫県で栽培されています。

こちらは「寫楽」を醸す宮泉銘醸さんの地元ブランドになりますが、最近は都内でも販売されるようになったようです。

「寫楽」ファンの方にとっては嬉しい限りですね。

 

④は言わずとしれた酒米の王様「山田錦」で醸したものです。

木屋正酒造さんは三重県産の「山田錦」も使用していますが、大吟醸規格のものには兵庫県産の「山田錦」を使用しています。

この「而今 大吟醸」は弊社のマイナス5度の冷蔵庫で一年寝かせた28BYです。

予想通り、一番早く空瓶となっていました。

 

「山田錦」は作付面積が第一位で、兵庫県産のものが全体のシェアの6割を占めています。

東北から九州まで幅広く栽培されていますが、地域によって品質は異なります。

兵庫県の特A地区のものが最高とされています。

 

⑤は②同様、前回のテーマの一つである「愛山」で醸したものです。

十数種類の酒米を使いこなす秀鳳酒造場さんの中でも人気の一本です。

 

⑥は「五百万石」を使用したものです。

1957年、新潟県の米の生産量が五百万石を突破したことから命名されました。

かつては作付面積が第一位でしたが、2001年に山田錦に抜かれ、その後一度追い抜きましたが、また追い抜かれ、現在では作付面積が「山田錦」に次いで、第二位となっています。

「義侠」と言えば「山田錦」ですが、唯一新酒第一号となるこちらの酒だけは「五百万石」を使用しています。

とりわけ「五百万石」の生産地の中でも、富山県南砺農業共同組合の農業に対する姿勢や熱意、そして優れた栽培方法に共感し、応援する気持ちも込めて、こちらで栽培されている「五百万石」だけで醸しているそうです。

 

⑦は「美山錦」で醸したものになります。

かつては生産量が酒造好適米のベスト3にも入っていた「たかね錦」に放射線処理を行い、より大粒で心白発現率の高い品種を目標に育成され、誕生したのが「美山錦」です。

現在では「たかね錦」に代わり、作付面積で「美山錦」は第三位となっています。

長野県だけでなく、東北地方を中心に栽培されています。

今回出品した「信州亀齢」ではその「美山錦」を39%まで磨いています。

「美山錦」と「信州亀齢」は相性が良いようです。

 

⑧は「八反錦」を使用しています。

かつて広島県を代表する酒造好適米だった「八反35号」に食用米の「アキツホ」を交配して誕生したのが「八反錦」です。

「荷札酒」では29BYから「八反錦」を使用し始めました。

 

⑨は「兵庫夢錦」という酒造好適米を使用しています。

さすが「山田錦」の主要産地だけあり、これまで20種類もの酒造好適米を開発してきましたが、10年振りに新品種となる「Hyogo Sake 85」という国内初となるローマ字表記の酒米も開発されました。

「播州一献」を醸す山陽盃酒造さんは、11月8日の火事で築約150年の倉庫と歴史的建造物であった母屋が燃えてしまいました。

醸造設備のある仕込蔵は大きな被害はなかったそうですが、皆様にも応援して頂ければという思いもあり、こちらの酒を出品させて頂きました。

「兵庫夢錦」は西播磨地区で栽培されている酒造好適米になります。

 

⑩は「秋田酒こまち」で仕込んだものになります。

「秋田酒こまち」は高精白が可能な酒造好適米として、2001年に開発されました。

こちらの酒は「ふくはら酒店」の100周年記念として発売されたものになります。

 

⑪は「出羽の里」を使用しています。

山形県では「美山錦」や「出羽燦々」などは主に純米吟醸酒に使用されてきましたが、新たに純米酒向けに開発されてのがこの「出羽の里」です。

ただし、栄光冨士ではその「出羽の里」を38%まで磨いています。

「出羽の里」を使用した銘柄では、最も高精白な酒ではないでしょうか。

 

⑫は「白鶴錦」で醸しています。

「白鶴錦」は「山田錦」の両親品種(「新山田穂1号」と「渡船2号」)の交配を再現して誕生したものです。

年々「白鶴錦」を使用したものが増えており、「雨後の月」でも29BYから使用されています。

これまで造られてきた「雨後の月」とは少しタイプが異なるようです。

 

⑬は「雪女神」を使用しています。

「雪女神」は2015年、大吟醸酒向け酒造好適米として開発されたものです。

生産量に限りがあるため、現在は50%以上精米することが条件となっているようです。

「山形正宗」でも40%まで磨いています。

 

酒米が変われば、酒の味わいも多かれ少なかれ変わることがお分かり頂けたと思います。

そして、酒米を知れば、もっともっと日本酒が楽しくなるかも知れません。

 

 

それからお料理ですが…

先 付  秋茄子の味噌田楽

前 菜  柿と三つ葉の白和え  山形名物玉こんにゃく  椎茸の石づきのきんぴら

お造り  千葉県勝浦産金目鯛

焼き物  関西風白焼

煮 物  女将特製 山形牛のスネ肉と那須高原の大根のスープ煮

蒸し物  秋鮭の菊花きのこ餡

食 事  うな丼 出し汁 薬味

香の物  胡瓜 大根 蕪 人参 守口漬

 

先付には秋茄子の皮を剥いて翡翠茄子にし、見た目も綺麗な味噌田楽にしました。

前菜は、旬の柿を使用した白和え、そして山形の日本酒が多いこともあり玉こんにゃく、椎茸の軸の部分を細かく刻んできんぴらにしてみました。

お造りは、新鮮な金目鯛です。

煮物には女将の一品として、こちらも山形牛のスネ肉をじっくり煮込んで、那須高原野菜の大根とともにスープ煮にしました。

蒸し物には、秋鮭と春菊を豚バラで巻き、蒸してから、菊花と3種のきのこを使って餡かけにしました。

 

お料理はいかがでしたでしょうか。

 

また楽しい日本酒の会でお会いしましょう。

よろしくお願い致します。