赤武と荷札酒を楽しむ会

昨日「赤武と荷札酒を楽しむ会」を開催致しました。

ご参加頂きましたお客様、誠にありがとうございました。

 

当初の予定では「赤武」だけの日本酒会を予定しておりましたが、急遽「荷札酒」も加えさせて頂きました。

というのも両銘柄を醸すのは平成4年生まれの古館龍之介さん(赤武)と、同じく平成4年生まれの田中悠一さん(荷札酒)で、ともに28BYで3造り目かつ同時期に新銘柄を立ち上げたお二人ということで、今後注目すべき若手の造り手が醸す酒の飲み比べも面白いのではないかと考え、このような企画に変更させて頂きました。

 

「赤武」を醸しているのは岩手県盛岡市に蔵を構える赤武酒造さんです。

もともとは大槌町に蔵がありましたが、東日本大震災による津波で壊滅的な被害を受けたため、岩手県内で設備を貸してくれる酒蔵を探し回った結果、ようやく盛岡市の桜顔酒造さんが手を差し伸べてくれました。

残念ながら、町の住宅復興が優先されたため大槌町に再建することは出来きませんでしたが、国からの資金補助は認められ、2013年復活蔵となる新醸造蔵を盛岡市に完成することができました。

2014年には新醸造蔵で酒造りも開始され、5代目蔵元古館秀峰さんの長男である龍之介さんも東京農業大学を卒業して帰ってきました。

そして龍之介さんが立ち上げた新銘柄が「赤武」(現在500石前後)というわけです。

 

一方、「荷札酒」を醸しているのは新潟県新潟市に蔵を構える加茂錦酒造さんです。

もともとは加茂市に蔵があったこともあり、加茂錦酒造という酒蔵名にもなっていますが、資金難から移転せざるを得なくなってしまったわけです。

加茂錦酒造さんは田中家の家業ではなく、悠一さんの父の叔母にあたる方が嫁いだ先が加茂錦酒造さんだったそうです。

そして経営難だった酒蔵を悠一さんの父が「せめて暖簾だけでも残したい」と経営を引き継ぐことにしました。

今流行りの酒がどういうものなのか確かめるため、東京の大手酒販店で片っ端から日本酒を購入し、夕食時に試飲していったそうです。

そんな時、一緒に悠一さんも試飲していくうちに日本酒の魅力に取りつかれ、自ら酒造りをすることを決めました。

そして悠一さんが立ち上げた新銘柄が「荷札酒」(28BYは700石~800石を予定)だったのです。

 

それでは今回の出品酒ですが、乾杯酒を含め13銘柄です。

この中で乾杯酒とさせて頂いたのは…

一番右端にある「AKABU赤武 純米大吟醸」です。

「赤武」銘柄の最高峰となる逸品です。

山田錦に匹敵する酒米を造りたいと岩手県で開発された酒造好適米「結の香」を40%まで磨いて醸したものです。

綺麗で雑味のない旨味のあるお酒でした。

 

その他「赤武」の出品酒は…

①AKABU赤武 純米吟醸 山田錦

②AKABU赤武 純米吟醸 雄町

③AKABU赤武 純米吟醸 結の香

④AKABU赤武 純米吟醸 吟ぎんが

⑤AKABU赤武 純米吟醸 NEWBORN

⑥AKABU赤武 純米 NEWBORN

⑦AKABU赤武 F NEWBORN

①②は27BYまではすべて岩手県産米で醸していましたが、28BYより県外産の酒米も使用することにしました。

これから数年はいろいろな酒米に挑戦していきたいそうです。

両銘柄、燗にしても味わってみましたが、燗でも美味しいお酒でした。

③④はともに岩手県の酒造好適米を50%まで磨いたものです。

⑤⑥⑦のNEWBORNとあるのは生酒のことです。

⑦の「F」というのは「For you」の略だそうで、低価格帯の酒でも美味しさをわかりやすく表現したかったのだそうです。

 

「荷札酒の」の出品酒は…

⑧加茂錦 荷札酒 純米大吟醸 雄町50 ver.2 しぼりたて 無濾過生原酒

⑨加茂錦 荷札酒 純米大吟醸 月白 しぼりたて

⑩加茂錦 荷札酒 純米大吟醸 槽場汲み ver.2 瓶火入れ

⑪加茂錦 荷札酒 純米大吟醸 紅桔梗 ver.4 しぼりたて 瓶火入れ

⑫加茂錦 荷札酒 純米大吟醸 黄水仙 ver.4 しぼりたて 瓶火入れ

⑧は悠一さんが尊敬する「十四代」を醸す高木さんが謳う日本酒造りの黄金比で醸したものです。

普段飲み慣れない方や日本酒初心者の方にも飲んで頂きたいと、アルコール感を感じさせないようにしたそうです。

⑨は「黒龍」や「磯自慢」などを目標に、「荷札酒」の中では最も淡麗な味わいに仕上がっています。

⑩はフレッシュでガス感のある酒で、大手酒販店で先行発売されているものです。

⑪はアルコール度数が13度と低アルコールとなっていますが、旨みのある酒に仕上げてあります。

こちらも燗にしてみましたが、長時間飲み続けるには飲みやすいかも知れません。

⑫は最も個性的な酒として造ったそうです。

フレッシュで濃厚だけど重たくない、「醸し人久平次」を意識しているようです。

 

どちらの銘柄も20代半ばの方が造ったとは思えない出来栄えで、今後の活躍を期待したいところです。

 

それからお料理ですが…

先   付  サーモンと新玉葱のグレープフルーツ和え

前   菜  関西風白焼の山椒味噌 ピリ辛蒟蒻 甘海老の酒盗

変りお造り  初鰹のタタキ 九条葱 茗荷 にんにく 生姜

焼 き 物  鰻の肝焼き

蒸 し 物  女将特製 冷製茶碗蒸しの湯葉餡かけ

焼 き 物  鮎の塩焼き 菊花蕪 河豚皮のにこごり

香 の 物  胡瓜 大根 人参 蕪 守口漬

食   事  うな丼 薬味 出し汁

 

先付では淡路島から送って頂いた新玉葱に旬のグレープフルーツで酸味を、そしてサーモンで塩気をプラスして爽やかな一品にしてみました。

前菜には関西風の白焼に山椒を加えた味噌で、七味でピリ辛に味付けした醤油味の蒟蒻、そして甘海老と酒盗を合わせ、お酒がすすむ3品をご用意しました。

江戸時代、江戸っ子たちは大金を払ってでも「初鰹」を食すことが「粋」だと言われていたそうです。変りお造りには、その初鰹をタタキにして、薬味たっぷりでお召し上がり頂きました。

蒸し物には女将の一品としまして、冷製の茶碗蒸しに生湯葉をのせ、その上から冷たいべっ甲餡をかけ、初夏にふさわしい爽やかな一品にしてみました。

焼き物には鰻の肝焼きに他に、これから旬となる鮎の塩焼きを蓼酢をつけてお召し上がり頂きました。

 

今回のお料理はいかがでしたでしょうか?

 

次回は「愛山を楽しむ会」を予定しております。

よろしくお願い致します。